特集

コーヒーの店特集
《東武東上線編》Coffee Shop Special Tobu-Tojo Line version.

個性あふれる名店がひしめく、いたばしの珈琲店。一杯のコーヒーを巡る《東武東上線》の小さな旅、始まります。

-目次-
個性あふれる名店がひしめく、いたばしの珈琲店。そこには美味しく香り豊かなコーヒーとともに街と人に育まれた独自の文化と個性があります。

板橋区を横断する「東武東上線」と「都営三田線」それぞれに、果たして沿線文化とも呼ぶべきカラーは見つかるのでしょうか?それはどんな色なのでしょうか?

そんなことを考えながらいたばしの珈琲店を訪ねるのもきっと興味深いことでしょう。

一杯のコーヒーを巡る《東武東上線》の小さな旅、始まります。

Yamaki COFFEE(中板橋)Yamaki COFFEE (Nakaitabashi)

タイ山岳民族が栽培するコーヒーを自家焙煎で
初めてタイに旅行した時から、国の雰囲気やタイ人たちの人柄に触れて、何か懐かしい日本のような感じもあってたちまちハマってしまったんですね。最初はバンコクしか知らなかったけど、北へ行けばさらに人は素朴で優しくなって、よりタイを好きになったんです。

店は6年目で、タイの現地農園からコーヒー豆を自分で輸入して自分で焙煎し、自分で販売するスタイルでやっています。

そんなに詳しくなかったので、“あ、タイでもコーヒー作ってるんだ”って程度だったんですけど、段々と “何とか日本でも紹介できないかな、持ってこられないかな” と考えるようになって。当時はサラリーマンをしていましたが、大学の頃から漠然と独立願望を持っていたのでコーヒー豆の輸入を仕事にしていけないかなと。
タイ北部の山岳地帯で作られるコーヒーの特長は、まずすっきりと軽やか、程よい酸味も持っている。僕が命名したタイの山岳民族であるアカ族が作った豆、「森の実りコーヒー」です。最近はこの名前で豆を買いに来てくれるお客さんも増えました。

まずタイが好きでタイでコーヒーに出会って、コーヒーの勉強は後からの独学だったんですが、たまたま色んな偶然のめぐり合わせで出会った農園が、一つは権威ある賞を獲得するような技術的にも優れている立派なところ、もう一つはアットホームな生産者で、お付き合いは今につながっています。

最初のうちは思うようなクオリティの豆が送られてこないこともあったけど今は信頼して任せています。昨年はお客さんと現地の農園を訪ねて収穫体験するイベントもやりました。
ハーブティーもタイのものを置いていますし、タイ産のエスプレッソをマンゴーやグアバで割る現地流の飲み方もある。

スイーツもいくつか手造りしていて、その「エスプレッソチーズケーキ」もあります。お客さんには中板橋らしいお得感を感じてもらいたくてマグカップでコーヒーを出しているんですよ。

タイ山岳民族の伝統的なお土産品なども販売しています

まずはタイでもコーヒーを作ってるんだと知ってもらいたい。さらにはそこに従事する人たちはあまり裕福ではないケースが多いので多少でも手を差し伸べられたらというのが僕の願いです。

当初はなんとか広めなきゃと安価で売っていた、出していたんですがでも、それじゃ続けられない。そこの仕組みを何とかするのが今後の目標です。

まずはこのお店をきっかけに、僕の大好きなタイのことを少しでも知ってもらえるきっかけになれば嬉しいですね。

Information

Yamaki COFFEE

■ 店舗情報(営業時間は2022年2月時点のものです)
所在地:東京都板橋区中板橋26-2
定休日:水曜日
営業時間:11時30分 ~20時 / 土日祝 11時 ~20時
電話番号:080-4622₋3737
禁煙、子ども連れOK(静かにしていられれば、ただしお子さま向けメニューなし)、豆や道具類などの販売/相談OK
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キャリオカ珈琲(ときわ台)Carioca Coffee (Tokiwadai)

わざわざウチに来てくれる、その期待に応えたいんですよ。
コーヒーの卸しの会社に勤めたんですが、親父の教えでどんな商売でも3年は辞めるなと。それが結局23年に。最初は営業ばっかりだったけど、そのうち焙煎をやるようになってから同じ豆でもほんのちょっとの焼き加減で大きく味が変化する面白さ奥深さを覚えましたね。

「キャリオカ」って、リオデジャネイロ生まれの人、リオっ子って意味なの。1998年に開店して今年で24年目になりました。なるべくフレンドリーな、誰でも入れる店を目指してやってきました。
誰が来ても、どんな好みにも合うものが出せるよう考えて豆を仕入れています。現在は19種、これ以上増やすと豆の新鮮さを保てない。コーヒーはまず鮮度ですから。その次が品質。

これと決めた種類は無くて、新しいものもテストしてみて、味見して焙煎具合も試してみて。だから100gからローストできる「サンプルロースター」がある。本番用の機械は2㎏からだから、最適な焙煎を何度も試すのは難しいんです。

お客様によって、かなり個性的な味を好まれる方には、その方専用に200gだけ焙煎してお渡しすることもありますよ。
ウチの特長は、低めの温度でじっくり焙煎すること。火を弱めてその分じっくり時間をかけて。温度を上げると時間は短縮できるけど仕上がりにばらつきが出ちゃう。

気温や湿度、風の強さでも焙煎の具合は変わる。焙煎機の中の空気が引っ張られちゃって火が強くなるんだね。機械で焼くだけなら誰でもできるけど、常におなじ仕上がりを維持するのはやっぱり経験がないとね。ある程度自信を持てるまで10年は掛かりましたよ。最初のうちは目指したい仕上がりのために同じ豆を何度も何度も焙煎しました。
お勧めは?と聞かれたらまずお客様の好みを伺う。その意味で「お勧めはありません」と答えます。

そもそも自分の好みが分からない人、どう表現すればいいのか分からない人にはまず苦みと酸味のバランスの取れた豆を試してもらう。そのために100gからお分けしています。大体10杯分ですね。

今はインターネットですぐに情報が手に入っちゃいますが、まず一度自身で確かめてみて、その上で口に合うかどうか、好みに合うかどうか判断してもらいたい。だから遠方の方でもまず電話をもらって会話して、相談してくださいって言ってるの。そのための知識と経験は蓄えてきたつもりだからさ。

わざわざスーパーじゃなくてウチに買いに来てくれている人に、その期待に、こだわりに応えたいんですよ。役に立ちたいんです。

毎月5日、15日、25日に30%オフの割引セールをやっているんだけど、鮮度を保ってセール販売できるように、焙煎から販売までのサイクルを試行錯誤してこの設定にしたんだよ。できるだけ美味しくお得に買い物して欲しいからね。

コロナ感染拡大防止のため、今は店内での喫茶利用はお休みしています。

僕は板橋で生まれ育って、商店街育ちだったから小学校から帰ると近所の八百屋さんに行って手伝ったりね。お客さんと接するのは好きだったんだな。自分で店やりたいって気持ちはその頃から来てるのかもしれませんね。

だから喫茶を再開して、お客様も安心してコーヒーが飲める日を心待ちにしていますよ。

Information

キャリオカ珈琲

■ 店舗情報(営業時間は2022年2月時点のものです)
所在地:東京都板橋区常盤台2-29-16
定休日:日曜日、祝日
営業時間:10時 ~18時
電話番号:03-5392-8777
※現在、店内での喫茶をお休みしています
毎月5日、15日、25日に30%オフの割引セールを実施しています
禁煙(喫茶営業再開後は時間帯によって切り替えを検討中)、子ども連れ、ベビーカーOK、豆や道具類などの販売/相談OK

珈琲屋らびっと(東武練馬)Coffee Shop Rabbit (Tobu Nerima)

心落ち着くレトロ喫茶で正統派の一杯を
昭和63年(1988)に開店して、もう30数年ですか。会社員を辞めてここを始めたのは38歳の時です。

ここは、もともと車庫というか趣味の部屋だった場所なの。古いバイクが何台かあって、ブリキのおもちゃとかゴジラなどの怪獣、ホーロー看板・ブリキの看板とか。

古いおもちゃが大好きで、大人になってからも集めていたんです。そこにちょくちょく仲間が遊びに来てコーヒー飲んで話したり、そのうち、喫茶店やったらいいんじゃない?って誰彼となく言い出して。その前から調理師の免許は持ってたので、新宿にあるコーヒーの専門学校に通ってさらに勉強したんです。

当時はレトロブームなんてなかったから、何でこんな古いものばかりおいてあるの?なんて、そんな時代でしたね。店を始めて5年位してテレビの「なんでも鑑定団」が始まって、少しづつ理解してもらえるようになっていきましたね。

古いものに惹かれるのは、造りの良さ、スタイルの良さ、質感など、一つひとつ物が良いからなんです。
ジュークボックスマニアのお客さんがいらして、ジュークボックスの修理販売を専門にやっているところで良いのを見つけてもらったんです。宇宙服を模したこのドーム型は、アメリカとソ連が盛んに宇宙開発を競っていた頃の象徴ですね。

50年代、60年代のオールディーズを中心に100枚のシングルが入っていますが、他にも200枚ぐらいのシングル盤があるかな。ビートルズも入ってますけど、彼らもやっぱり初期が魅力的。車でもなんでも、初期型が最高ですね(笑)

中身は真空管ですからメンテナンスが大変ですけど、今はインターネットで世界中の情報を調べられるから海外からも部品を取り寄せて自分で修理しちゃう。新しい情報にアクセスできないと、古いものを維持することもできないんですよ。
コーヒーは一杯ずつ、ドリップ式でやってます。30年前ハンドドリップは少なかったですね。

カップはお客さんのイメージで選んで、6割は女性ですから何度か来てくれたらなるべく違うカップで、そのたびに楽しみがあるようにしています。

ココアも自慢なんだけど、1時間ちょっと、ゆっくり煮込んで作ってますよ。インスタントのところが多いけど、煮込むと風味が全然違うんだね。
最近はインスタとかで店内の写真を見て、週末などはずいぶん遠くから来てくれますね。先週は湘南から来た人がいたね。

入口のピンク電話は使えるよ。お店に掛けるとこれが鳴るんだ。小っちゃい子が来ると使わせてあげるんだけど今の子はダイヤルの穴を指で押すんだよね。この雰囲気を懐かしがって来る年配のお客さんと、おしゃれだと思って来てくれる若いお客さん、同じくらいじゃないかな。みんなここは落ち着くって言ってくれますね。

たまにいらっしゃるお客様の中に障がいをお持ちの方がいるんです。コーヒーかココアか飲んでほんの少しおしゃべりしていくんだけど、帰りはすっかり笑顔になっているの。やっぱり古いものと美味しいコーヒーは人を元気にするんだなと思いますよ。

Information

珈琲屋らびっと

■ 店舗情報(営業時間は2022年2月時点のものです)
所在地:東京都板橋区徳丸3丁目13-10
定休日:水曜日
営業時間:11時 ~20時
電話番号:03-3933-2601
禁煙、おとなしくできれば子ども連れOK、豆や道具類などの販売/相談OK

ふろんてぃあ(大山)Frontier (Oyama)

コラボレーションが拡げるコーヒー店の可能性
僕はコーヒー豆の問屋に勤めてたんですが、豆を卸して出入りしていたこの店の先代に、引退するから後を継がないかと誘ってもらって。この店はオープンして38年位かな?マシンや店の造りもそのまんま、ずっと変わらずにここにあります。焙煎方法やブレンドのレシピは先代から教わったものをそのまま受け継いでますね。

開店当時、自家焙煎をやっていた店はそんなにないんじゃないかな。こだわりの店だったと思いますよ。ただ、自分自身はコーヒーそのものの追求というよりもコーヒーを通じて色々な人とコラボレーションしていくことに興味があるんです。継ぐことを決心したのも、この場所を使って色んな人たちとつながっていけるかなと。
この店を引き継いで5年になりますけど、ハッピーロード大山商店街の人たちと仲良くなって、自然とイベントやワークショップをやるようになりました。商店街やお客さん、周りの色んな人と話していく中で、思っていもいなかったアイデアが生まれて、拡がっていくのが楽しいんですよね。いたばしプロレスともコラボレーションしていて、YouTubeチャンネルにも出してもらったりしているんですよ。

自家焙煎の本格的なコーヒーと、他とのコラボレーションが共存する店は少ないんじゃないですかね。でも僕はコーヒーを売るだけじゃなくて、そこに必ずストーリーを込めたい、作り出したいんです。“スタイル”には全然こだわっていないですよ。
アーティストさんやNPOなどとコラボしたドリップバッグも作って販売しています。それらの売り上げの中から社会貢献活動に寄付する仕組みも作っているんです。また、就労支援の目的で障がい者の方が作っているクッキーやパンを仕入れたり、この場所を使って販売してもらったりしています。この店やコーヒーをツールとして、そんな社会貢献要素を持ったコラボレーションをどんどんやっていきたいですね。
お客さんに“お勧めはありますか?”と聞かれたらそのタイミングで一番鮮度が良いものを勧めますね。うちはスペシャルティだけでなく、日常使いの美味しいコマーシャルコーヒーも推しているんです。先代からのブレンドも引き継いだ最低限は守るけど、アーディスト、自分、コラボレーションによって自由に変化していきたいんですよ。

コーヒー屋さんだけでは出来ないことや生まれないアイディアが、コラボレーションによってどんどん拡がっていくのが面白くて仕方ないですね。

仕事では関わっていましたけど、コーヒー自体の素晴らしさに気付いたのはここでやり始めた最近のことですよ。周りから“もっとマジメにコーヒー屋やってよ!”って呆れられることもあるんですけどね(笑) 楽しめなくちゃ続かないんで、先代に叱られない程度にぼちぼちやらせてもらってます。
Information

ふろんてぃあ

■ 店舗情報(営業時間は2022年2月時点のものです)
所在地:東京都板橋区大山町18-1
定休日:日曜日(その他不定休あり)
営業時間:11時 ~ 18時
電話番号:03-3957-7860
禁煙、子ども連れ、ベビーカーOK、豆や道具類などの販売/相談OK
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文・写真=小笠原 努

次回の特集は

コーヒーのお店特集《東武東上線編》、いかがでしたでしょうか。いずれもコーヒーの味わいに加えて様々な個性が際立つ名店ばかりの東武東上線のコーヒートリップになりました。

まだまだ紹介しきれない素晴らしいお店がせめぎ合う、いたばしのコーヒーのお店。コーヒーのお店特集、次回《都営三田線編》をお楽しみに。